「おいちがたり」読書感想

最初のイメージ

幽霊が見えるなんてファンタジーチックでチープかななんて思ったけれど、意外と面白かった。
名探偵コナンの時代劇版を見ているような気分だった。犯人がだんだん明らかになる。
何なら幽霊が犯人の犯沢さんという感じだ。
主人公の前向きさが心霊現象に対する恐怖を感じさせない。
親戚のおばさんが明るくて人柄がよく、お父上との言葉の掛け合いが微笑ましい。
しかし、微笑ましいだけでは済まないのが世の常であり、水を差すような事件が起きてしまう。

本作に登場する鬼女

本書では犯人を鬼女と罵る。気がおかしくなり、屋敷内を暴れまわり、誰も手がつけられない。
自分の思い通りにならないと癇癪を起こし、わめき散らす。
私を見てくれと、私から離れないでほしい。自分は寂しい人間だから、大事にしてほしい。
この哀れな私の声を真面目に聞いてくれないなら、誰もわかってくれないなら、もういっそのことあなたを殺してやると。
なんだかこれ、どこかで聞いたことがあるな。
愛情に飢える子供?承認欲求がほしいツイッター民?いいねがほしいYoutuber?
私を見て、私を認めて、私を受け入れて、この感情がもたらす末路を的確に言い表していたのではないか。私もそのような気持ちがあることを反省しよう。
時代小説のように見えて、現代の問題を浮き彫りにする良書であった。
作中の鬼女は死んで幽霊となる。幽霊となって初めて冷静さを持ち、主人公に胸の内を明かす。
そして鬼女は自分の行いを死んでから反省する。渦中にいるときは気づかなかったと。
離れてみて初めて異常さに気づいたのだと、もう手遅れだと嘆くのである。
その中にいると気づかないことが多い。

感想

学校のクラスが世界ではないし、LINEグループが世界ではないし、Twitterが世界ではない。
自分の思っている世界から抜け出したとき、自分はどのように見えるだろうか。
死ぬ前に気づいて、コントロールできる人間になりたいものである。
個性的なキャラクターが優しく私達の世界を風刺してくれる大変良い本でした。
ありがとうございました。

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