竜宮城が登場
ほかの絵本の世界が登場するなんて珍しい作品だ。
なんと主人公が竜宮城に迷い込むのである。
主人公のたこやはちべえは「ガラスのツボ」を自慢する。
この「ガラスのツボ」の中にたこやはちべえが入り込み、海の底へ沈んでいくのだ。
ガラス瓶に船が入っているおもちゃを物語にしたような世界だ。
ガラス瓶を水に沈めると、境目がわからなくなるように、
透き通ったガラス瓶と、水の透明感が合わさって幻想的な水中を思わせる。
「ガラスのツボ」をランプの魔人のように捉えても面白いかもしれない。
ランプの魔人はこすると出てくるが、たこやはちべいは入ると竜宮城にたどり着くのだ。
どちらも魔法の世界だ。
主人公の前振り
たこやはちべえは最初にツボを見せびらかし、お金を見せびらかし、落としたお金を拾おうとする。
さらには竜宮城で浦島太郎になり替わろうとし、玉手箱をもらおうとして、サンゴをむしり取ろうとする。
絶対に罰が当たりそうなふるまいをしていて、案の定、うらしま太郎のように時代をさかのぼらされてしまう。
昔話にはオチが無い物が多いが、今回の作品はオチがついててすっきりする物語だった。
ちょっと深読み
たこやはちべえが浦島太郎になりすまして、竜宮城を訪れた時、もう一人の浦島太郎が現れる。
たこやはちべえは正直に自分が偽物だと名乗った部分は称賛したい。
本来の物語に登場する浦島太郎も再び竜宮城を訪れることは無かったので、おそらく次に来る浦島太郎も偽物だろう。
竜宮城に次々と訪れる人というのは、海に落ちた人を示しているのではないだろうか。
三途の川や、賽の河原、閻魔様の御前を竜宮城と言っているのではないだろうか。
そして、現代の大阪に再び登場する。
生まれ変わって現代の大阪の世に解き放たれるという世界観を暗示していたのかもしれない。

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