素晴らしいあとがきだった
ノンフィクションで書いてるからこそ、物語全体がじれったく進むように感じるのだという。
本書の中心人物となる山本はロシアのラーゲリー(収容所)での生活を長く続けることになる。
日本に帰りたいけど帰れない、そんなもどかしさを感じながら収容所で辛抱強く日本に帰る機会を伺う。
肉体労働でこき使われながら、希望を持ち続けることの困難さが、物語全体からひしひしと感じられる。
これが書き手の伝えたかったことだったとは驚きである。
しっかりと読み手に、私の心に届いいていた。
東野圭吾さんの殺人の門を読んだときにも素晴らしいあとがきだと思ったが、その時と同じような納得感がこの本から得られたように感じている。
ロシアに関連する作品
私が連想するロシアのイメージは、同士少女よ敵を撃てや、ゴールデンカムイ、熱源など争いの只中を描いた作品が多かった。
今回は争ったあとの、日本がロシアとの戦争を終えたあとの、残った人たちの話だった。
物語は続くのだと、さらに視野が広くなったように感じる。
日本へ帰国することを「ダモイ」という。主人公の山本はこのダモイを諦めない。
多くの在留日本人が、もうここで死ぬのだと。白樺の木の下に埋められてしまうのだと嘆くなか、収容所のメンバーにダモイをちらつかせ励まし続ける。
山本は収容所の皆を励まし、死に際には自分の遺書を収容所のメンバーに覚えせる。
これは、他の在留日本人に希望を捨てるなというメッセージだったと思う。
山本が残したのは手紙ではなく、彼等だった。彼等が山本の遺書になったのだ。
山本の妻は本土で遺書の内容を人から聞くことになる。
そこで感じ取ったのは内容だけではなかったはずだ。
私を尋ねてくれるほど、夫は慕われていたんだと、ラーゲリで人々を励まし続けていたんだなと、
さぞかし感動したに違いない。
アムール句会や劇など、山本が中心となって皆を元気づけた結果、日本に帰れたのではないだろうか。
大変良いお話でした。ありがとうございました。

コメント